資料NO. : 17 |
資料名 : 「有事立法と憲法改悪に反対する全国署名」 請願5項目についてQ&A |
制作者 : 西川 重則(百万人署名運動事務局長) |
制作日 : 2002/09/14 |
①いかなる戦争にも参加・協力しないこと。 Q.なぜですか? A.「戦争は答えではない」からです。 第二次世界大戦後に限っても、ベトナム戦争、フォークランド紛争、湾岸戦争など「戦争は答えで はない」事例として挙げられています。「アメリカが戦う必要のなかった戦争」と明記された少年少女 のための本が読まれていますが、その戦争とは、その本ではベトナム戦争のことを指しています。 湾岸戦争が始まる前に、「戦争は答えではない」ということを裏づけるために、アメリカのキリスト者 が協力して現地調査をしたことは、日本ではあまり知られていません。 また、ニクソン元大統領の「湾岸戦争は石油のため」発言、戦争は軍需産業にとって「在庫一掃 の ため」と言われていることは、アメリカでは常識です。 日本がアメリカのはじめる戦争に「参加・協力」する理由はありません。「同時多発テロ」が起こっ た歴史的背景・要因を改めてしっかり学び、戦争への備えではなく、平和への備えをこそなすべきで しょう。 ②自衛隊に武力行使をさせないこと。 Q.なぜですか? A.日本国憲法第9条前段に、次のように書かれています。「日本国民は、……国権の発動たる 戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、‥…・永久にこれを放棄する」。 しかし、自衛隊法、PKO法、周辺事態法、テロ対策特措法において、「武器の使用」、「武力の行 使」を正当化し、「戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認」という憲法第9条の精神・条文を無視し、 自衛の名の下に武力の行使を合憲・合法と見なし、今日に至っています。 有事法制関連3法案の国会審議に際しては更に拡大解釈をし、日本が「武力攻撃」を受け、自 衛隊が反撃「武力行使」できる条件として、相手方の「武力攻撃」の着手があった時を含める答弁 をしました。そうした答弁の背景には、自衛隊法第3条「専守防衛」の枠を広げながら、 しかも「着手」段階での反撃は「専守防衛」の範囲内だから合憲・合法とのおごりの姿勢があった と言うべきでしょう。 それはあくまで、侵略された場合は自衛権の行使は認められる、したがって自衛の場合は「武 力行使」は問題はないという従来の政府見解に基づく解釈であって、日本国憲法第9条本来の解 釈とは無縁であって、私たちはそのような立場を認めていません。 ③戦争のための予算措置を執らないこと。 Q.なぜですか? A.戦後、防衛費GNPl%枠の見直しが政治問題となったのは、1970年代半ばからですが、福田剋 夫内閣の発足後、福田首相が防衛庁に有事立法などの研究促進の指示(1978年7月27日)、 日米防衛協力のためのガイドライン決定(同11月27日)と深い関係があります。 その後、戦後政治の総決算の主張者・中曽根康弘首相によって、防衛費のGNP1%枠突破 が見られたのは、1987年度政府予算案が決定された時(1986年12月30日)でした。 一般に軍事費は、戦争の準備・開戦・継続のための税金、重税によります。たとえば対中 国侵略全面戦争の1937年において、軍事費は歳出の49%となっていました。「軍備は戦争 のため」、「戦争を目的だとする平時の備へ」であり、「軍備を置くこと」は、「戦争の可能の みならず戦争の意志をもつこと」を意味します(大内兵衛『帝国主義戦争と戦後甲財政問題』 56頁参照)。 日本では、すでに対米支援のため、現在海上自衛隊が遠くの洋上に駐留しているのではないで しょうか。陸上自衛隊も遠くに駐屯して、PKFとして軍事活動をしているのではないでしょうか。 私たちは、内閣が提出する予算、それをチェックすべき国会の現状に対して、警告し、戦争 のための予算措置を執らせない責任があるのではないでしょうか。 ④有事立法を行わないこと。 Q.なぜですか? A.一言で結論を言えば、日本国憲法はいかなる有事法をも想定していません。したがって、 憲法を尊重し擁護する責任を持っている内閣が、有事立法を制定することはあってはなら ないことです。 現在継続審議となっている有事法制関連3法案は、安全保障会議設置法の一部を改正する 法律案、武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関 する法律案、自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の 3法案であり、それぞれは、戦争の備えのために、平時からどのような備えをすべきかについて、 軍事優先を軸に深い関係を持っています。詳しい解説は省きますが、今回一部を改正するに過ぎ ないように思われているとすれば、それは大きな間違いです。 昨年1月6日、中央省庁が再編されましたがその目的は、政策の決定・内閣の一元化など首相 のリーダーシップを拡大強化し、首相中心の内閣主導体制の構築にあります。今後、関連3法案 がどのように修正されようと、戦争体制づくりの最高責任者である首相の権限の縮小・後退は考 えられません。 ⑤平和憲法を堅持し、第9条を改悪しないこと。 Q.なぜですか? A.日本国憲法を多くの人々が平和憲法と呼びなれているのは、決して小さなことではありま せん。 第2章に「戦争の放棄」が明記されています。徹底した平和主義を表明していることは、読めば 誰でも納得できるでしょう。非武装・非戦を強調した歴史的な文書であり、「平和憲法」と呼ぶにふ さわしい内容であることは自明と言わねばなりません。 最近、第9条を批判するために、「空想的平和主義」とか「一国平和主義」あるいは軍備を保持し て国を守る平和主義の必要を主張する人々は「積極的平和主義」という立場をPRしていますが、ど れも第9条の歴史的成立過程を始め21世紀のあるべき普遍的平和主義の意味・方向性を考えな い人々の喧伝に過ぎません。 小泉首相は、日本国憲法「前文」と第9条の整合性を無視していますが、それは、制憲国会にお いて、「前文」と第9条の深い関係を示唆した金森徳次郎国務大臣の答弁を学んでいないことを露 呈しているに過ぎません。 「前文の精神の下に各個の規定が理解せられ、且つ運用せらるべき」こと、「我等の安全 と生存」は必ずしも武器でなければ保全出来ぬと云う訳ではない」(1946年7月1日、7月11 日での答弁。西川重則『平和を創り出すために』、138、139頁参照)。 私たちは今こそ、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることにのないやうにするこ とを決意 し」、「この憲法を確定」(「前文」)した先人の志を心に刻み、平和憲法を堅持し、 第9条を改悪しないことの歴史的・今日的意義を訴えるべき秋(とき)にあって、武力によらな い国のあり方を追究しつつ、平和を創り出す責任と課題を共に担おうではありませんか。 |
掲載:2002/09/23